民法:登記請求権
Aが,Bに売却した甲土地について所有権移転登記手続をしない間に死亡し,
Aの共同相続人であるCとDがAの代金債権と所有権移転登記義務を相続した場合,
Dがその所有権移転登記義務の履行を拒絶しているため,
Bが同時履行の抗弁権を理由として代金を支払わないときは,
Cは,Bに対する自己の代金債権を保全するため,
Bに代位して,BのDに対する所有権移転登記手続請求権を
行使することができる。
(最一小判昭和50年3月6日民集29巻3号203)
BのDに対する所有権移転登記手続請求をすることを認めた。
これは、債権者代位権の転用事例であり、Bの無資力は要件とされない。
なお、債権者代位権の転用事例においては、
被保全債権が金銭債権でないことが通常であるが、
この場合は金銭債権を被保全債権とする特殊な事例である。
中間登記請求権は原則として認められない。
当事者全員の合意がある場合のみ、例外的に認められる。
最三小判昭和40年9月21日民集19巻6号1560頁
Aの所有する甲土地について、
AからB,BからCへの所有権移転登記がされている場合,
それぞれの所有権移転登記に対応する権利変動がないときは,
Aは,Cに対し,
直接自己への所有権移転登記手続を請求することができる。
つまり、判例は以下の2つの方法いずれも認めてきた。
その①
Aは、物権的登記請求権に基づき、BおよびCのそれぞれに対して、
所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができ、
登記名義をCからB、BからAへと順次回復することができる。
その②
AはCに対して、真正な登記名義の回復を原因とする
所有権移転登記手続請求をすることもできる。
(最三小判昭和54年1月30日判時918号67頁等)