民法:詐害行為取消権
判例(最一小判昭和53年10月5日民集32巻7号1332頁)
「民法四二四条の債権者取消権は、
窮極的には債務者の一般財産による価値的満足を受けるため、
総債権者の共同担保の保全を目的とするものであるから、
このような制度の趣旨に照らし、
特定物債権者は目的物自体を自己の債権の弁済に充てることはできない」
よって、
「特定物の引渡請求権に基づいて直接自己に所有権移転登記を求めることは許されない」
< 主張・立証責任 >
詐害行為取消訴訟の原告(取消権者)は、
詐害行為の対象である行為が債権者を害することを主張・立証し
(大判大正10年3月24日民録27輯657頁)、
また債権者を害することを債務者が知っていたことを主張立証しなければならないが
(大判明治37年12月9日民録10輯1578頁)、
債権者を害することを受益者が知っていたことの主張・立証責任は債権者になく、
受益者に自己が債権者を害することを知らなかったことの立証責任があるとされている
(最三小判昭和37年3月6日民集16巻3号436頁)。
また、詐害の認識については、一般の債権者を害することについて存在すれば足り、
特定の債権者を害することまで認識する必要はない
(最二小判昭和50年12月19日金法779号24頁参照)。
債務者の無資力については取消権者が主張立証しなければならないが、
詐害行為取消訴訟の口頭弁論終結時までに債務者の資力が回復したことは、
被告(相手方・受益者)において主張立証しなければならない。
判例(大判大正5年5月1日民録22輯829頁)